乳がんの自己検診(セルフチェック)

 

乳がんの現状~二次予防は自己検診から~  医学博士 多田 和弘

治療法や予防法は日々進歩していますが、
なんと言っても早期発見・早期治療が望まれます。

女性のがんとしては、子宮がんの死亡率は年々減少しているのに対して、近年、乳がんの発生率、死亡率は増加傾向にあり、女性のがん死亡率の第1位となっています。
日本で乳がんになる方は、毎年約3万5千人にも上っており、ほぼ30人に1人の女性が乳がんにかかっているといえます。
修正推計によりますと、10人に1人で、欧米の7、8人に1人の数値に近いとも考えられます。これは乳がんに毎日約100人ずつなっている割合で、しかも発見が遅れたため亡くなった方は約30%の1万人もおり、1時間に1人の女性が乳がんが原因で亡くなっていることになります。
乳房は他の内臓と比べ自分で検診できるという大きな特徴がありますので、“どうせ分からないから”とか“見つかると怖いから”と最初からあきらめずに、前向きに、積極的に、根気よく、自分の普段の乳房をよく把握しておいて、できるだけ早期のしこりや変化を見つけ、乳房温存治療が可能になるように、月に1回のセルフチェックと、年1回の定期検診を欠かさないようにして、乳がん死を予防しましよう。
尚、すでに乳がんを経験された方々も是非、皆さんが自己検診を実行されることを心から望んでおられます。

乳がんの発生部位と頻度

自己検診(セルフチェック)~何よりも前向きに積極的に取り組む心構えで~

1:視診のポイント

鏡に映して正面、斜め、前屈、背屈をして、様々な角度と光線の方向を工夫、両腕あげと降ろした組み合わせで視ましょう。

皮膚の状態
色・表面のくぼみ、盛り上がり、発赤、浮腫など。
左右差・形・大きさの把掘
えくぼ徴候
(ほっぺのえくぼは可愛いが、乳房のえくぼは可愛くありませんので、すぐ精査へ)
腰を両手ではさむように力を入れて大胸筋を収縮して視ます。
乳頭の状態
湿疹・ただれ・かゆみがあるか。
乳首のおじき状態や腫瘍の出来ている方に向いているか。(ポインティング)
乳頭分泌物
湿疹・ただれ・かゆみがあるか。
乳首のおじき状態や腫瘍の出来ている方に向いているか。(ポインティング)
乳首が陥没してきたかどうか
要因 相対危険度
乳がんになったことのある人 6.0
母親、姉妹、娘が乳がんになった人 2.8
初潮が12歳以前にあった人 1.9
30歳以上の未婚の女性 3.0
初産年齢が30歳以上の人 1.7
月経が55歳以上になってもある人 1.6
閉経後の肥満 1.4

表:乳がんにかかりやすい危険因子(乳がんの臨床3:1-21 1998)

2:触診のポイント

ポイント

平手触診
手のひらと5本の指で撫でるように。
指腹法
第2~第4指を揃えて触診。螺旋、のの字、平行(肋骨に沿って)、放射線状(乳首を中心に)と様々あるが、どれか二つ位の方法で慣れるとよい。
指先交互法
指の先端を2本揃えて指踏みしながら触診します。
えくぼ徴候の出し方
しこりを摘んで押し下げるようにします。

3:しこりの特徴

自分で触診してもわからないとあきらめずに、根気よく丁寧に実行しましよう。

痛みはほとんどない
ある時は乳腺症に合併しているときがあります。
硬さの表現のたとえ(種類)
a.パチンコ玉・ビー玉・石ころみたいにこりこり、ごりっと硬い(がんの疑い)
b.マシュマロ状だが中心部に硬い芯がある(がんの疑い)
c.スーパーボール・グミキャンディー(線維腺腫)
d.テニスボール(嚢胞)
e.イカの刺身くらいの感じ(乳腺症)※a、bはできるだけ小さい状態(2センチ以内の大きさ)で見つけることが望ましい。
c、d、eは非常に難しいが努力しましょう。
辺縁
平滑かザラザラと不規則か。
温度
がんのあるところは高く、平手触診でジワッと熱っぽさを感じる。
炎症があると発赤と痛みを伴う。
可動性があるかどうか
周囲にくっついている感じかよく動くか。
腋窩の触診
3本の指で反対側の腋の下を奥の方から乳腺の近くまで触診。
リンパ節のしこりがあるかどうか。

4:視・触診の時期

月経が終わって一週間以内の乳腺の張りがなく柔らかな時、子宮全摘をした方は張りのない時に。(慣れるまでは、張っている状態の乳腺の位置や硬さを把握しておくのもよい。)
閉経後の方は、毎月一回、日にちを決めて実行。
自分の乳房の状態をよく把握しておくことが変化に気付く第一歩です。
もし変化に気付いたら躊躇せずに乳腺専門クリニックで詳細に検査を受けることです。次のような検査法があります。

チェック

様々な検査方法

生活習慣改善や禁煙を試みて、積極的に早期発見・早期治療で乳がん死を減らしましょう。

乳がんの成長速度

(金杉和男・水野弘・宇治輝幸=ビーナス達への警鐘、学生援護会、東京、1992より改変①より引用)

〔参考図書〕
(1)「乳がんテキスト」 野口昌邦著 南江堂 2003
(2)「触知する乳房腫瘤の鑑別」 植野映著 日本医事新報NO4147 2003・10・18
(3)「乳腺外来へ行こう!」 高木博美著 マキノ出版 2003
(4)「乳がん全書」 福田護著 法研 2002
(5)「いちばん新しい乳がんの本」 福富隆志著 二見書房 2002
(6)「産婦人科治療」(知っておきたい乳房管理の実際)第87巻6号 永井書店 2003

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